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雨の土曜日に、Nが北九州からやって来てくれた。
先月、この男の36歳の誕生日に贈った本を、 とても気に入ってくれて、 携帯電話のように持ち歩いてくれていた。 その本は、メモ帳のようにふとポケットから出されて開かれ、 馴染んだハンカチのようにくたびれて、Nの手の中に寄り添っていた。 「雪沼とその周辺」堀江敏幸 架空の街、雪沼とその周辺に暮らす人々の微細な心の機微、 を丁寧に丁寧に、つづれ織りのように折り重ねた連作短編集。 ここに暮らす人々の佇まいやテンポは、 たおやかで、さりげなくて、デリケートで、 そのままこの長年の友人、Nの人柄に通じるところがあり、 そんな思いを込めて贈った。 自分が何かを打つと、いつもいつも響いてくれる男、N。 喜んでくれて嬉しい。
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