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K山くんの家の猫に3匹の子猫が生まれたのは、
もう2〜3ヶ月も前だったろうか。 お店に里親探しの貼紙をしたり、 結局はうちの実家でも、その中の一匹をもらい受けることになった。 子猫は実家のほうですくすく育ち、面白いことに「水」によく興味を示すそうだ。 風呂のお湯やトイレの便器の水で玉取ろうとして落っこちてみたり、 なんだか、おもしろ猫に育ってる様子。 聞くところによると、K山くんのとこの母猫がいなくなってしまったらしい。 もう1ヶ月近く帰ってないそうだ。 「心配だねえ?」とわたし。 「いや、まあ、帰ってくるでしょう」とK山くん、落ち着いた様子。 「え? けっこう余裕やね」 「はあ。村上春樹の小説でも、帰ってくる時は何事もなかったみたいに帰ってきてましたから」 「ああ、そんなのあったねえ。『ねじまき鳥クロニクル』だ」 「はい。まあだから、大丈夫なんじゃないですかねえ」 「だといいけど、ちなみに何の根拠もないよね?」 「ええ、まあ、ハハハ」 帰ってくると、いいですね。
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雨の土曜日に、Nが北九州からやって来てくれた。
先月、この男の36歳の誕生日に贈った本を、 とても気に入ってくれて、 携帯電話のように持ち歩いてくれていた。 その本は、メモ帳のようにふとポケットから出されて開かれ、 馴染んだハンカチのようにくたびれて、Nの手の中に寄り添っていた。 「雪沼とその周辺」堀江敏幸 架空の街、雪沼とその周辺に暮らす人々の微細な心の機微、 を丁寧に丁寧に、つづれ織りのように折り重ねた連作短編集。 ここに暮らす人々の佇まいやテンポは、 たおやかで、さりげなくて、デリケートで、 そのままこの長年の友人、Nの人柄に通じるところがあり、 そんな思いを込めて贈った。 自分が何かを打つと、いつもいつも響いてくれる男、N。 喜んでくれて嬉しい。
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お店のカウンターで、Yちゃんが本を読んでいた。
「なんの本?」 「アリス イン ワンダーランド。映画も観に行きました」 「ジョニー デップね」 「そうなんですよ! ジョニー デップの映画初めて観ましたー」 「何?」 「パイレーツ オブ カリビアンも観てないんですよー」 「何?」 1つめの「何?」には、年取っちゃったジョニー デップを観るのが最初の出会いかあ、 という気持ち。 2つめの「何?」には、そんなもの観なくていい、という意が込められる。 というわけで、ジョニー デップが若く、かつ、ティム バートンと組んだ映画で、 「エド ウッド」を猛烈に勧めておいた。 女装癖のあるB級映画監督、を熱烈に演じる若きデップ。 ゴシック趣味丸出しのティム バートンの映像世界。 美しい。
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